資料がない場合には

税務調査では、確定申告書の数字の根拠となる資料が重要であることは別の記事でお伝えしました。

では、その資料が残っていない状態で税務調査の連絡があった場合はどうすればいいのでしょうか。

資料がないケースには、過去の通帳がない、請求書がない、領収書がない、契約書がない、帳簿がない、あるいはこれら全てがないということが考えられます。

資料がない場合の原則的な対処法は、集められるものをまず集めるということです。

通帳がない場合は、銀行に連絡し過去の明細をだしてもらうことです。

請求書や領収書がない場合は、取引先等に連絡し、可能なものは再発行の依頼をすることです。

お店で買ったものを今から全て再発行してもらうことは現実的ではありませんが、例えば建設業の方で外注費を支払っている場合は、連絡がつく人には連絡をして今から領収書をもらうことは可能です。

外注費など金額が大きくなるものは出来るだけ集めておきたいです。

クレジットカードでの支払いがある場合は、カード会社に連絡しクレジットカード明細を再発行してもらうこともできます。

クレジットカード明細は、本来領収書やレシートと同じ効果はありませんが、領収書の再発行が出来ない場合にはないより良いです。

帳簿がない場合はかなり厳しいですが、何もないよりはいいので出来る範囲で作成することです。

3年分、5年分が厳しいのであれば1年分だけでもいいですし、経費だけに絞る選択肢もあります。

本来、帳簿は確定申告の時に作成しておかなければいけませんが、それでもないよりは良いです。

このように、全くない状態から少しでも資料がある状態に近づけることが大切です。

通帳やクレジットカード明細の再発行は時間がかかります。

税務調査が1週間後に迫っている状況で間に合わない場合でも、再発行の依頼だけはしておきましょう。

現在再発行の依頼をしているとう姿勢を見せるこが出来ますし、交渉の材料になる場合もあります。

もし本当に何も集まらないような場合は、メモ書きでもなんでもいいです。

手帳でも、カレンダーでも、メールの文章でも何もないよりいいです。

消費税の課税事業者は負担が重くなる可能性がある

個人事業主の税務調査というと、所得税を思い浮かべる方が多いと思います。

しかし、資料がない場合に負担が重くなるのは所得税ではなく消費税です。

個人事業者は、基準となる2年前の売上高(消費税がかかる基準となる売上)が1,000万円を超える場合は消費税を申告して納めなければいけません。

この2年前の売上金額によっては、消費税の計算方法を選ぶことができます。

売上に対する消費税額から費用に対する消費税を差し引いて納付する消費税額を求める原則的な方法と、売上に対する消費税額に決められた率を乗じて納付する消費税額を求める簡易的な方法(簡易課税制度)があります。

この簡易課税の場合は、売上だけを基準として納める消費税額を求めますので、費用に関する領収書がない場合でも影響はありません。

影響があるのは、原則的な方法を採用している場合です。

例えば、売上3,300万円(消費税額300万円)、費用2,200万円(消費税額200万円)の場合で考えてみます。

納める消費税額は、300万円-200万円=100万円となります。

ただ、これには要件があり、「帳簿と領収書等」の両方を保存しておかなければいけません。

消費税法という法律で決められています。

そのため、この法律の原則的な規定によると、領収書や帳簿のどちらか1つでもない場合は、上記の200万円を差し引くことができないこととなります。(特例や改正事項も加味すると複雑になるためここでは原則的な取り扱いを紹介しています)

この場合、納めなければならない消費税額は、ダイレクトに売上に対する消費税額の300万円となります。

資料や帳簿がない場合、消費税に関しては最悪のケースとしてこうなる可能性もあります。

税務署側から「仕入税額控除の要件としてこう規定されています」と言われた場合、なかなか反論が難しくなります。

一方、所得税はここまで厳しくなく、資料がなくても認めてくれるケースもあります。

物を売っているのであれば当然その仕入費用もありますし、建設業で1人では抱えきれない場合には当然その外注費用が発生するという考えです。

その費用の求め方は、過去の原価率や各種費用の比率を採用する方法、直近の残っている資料を集計してその比率や金額を採用する方法、同業種の平均比率等を採用する方法など、何かしら合理的な方法で算出されます。

このように、資料がない場合に負担が重くなるのは所得税ではなく消費税です。

まとめ

今回は資料がない場合の対処方法についてお伝えいたしました。

日頃からきちんと帳簿を付けて資料は全て残っているということが理想です。

ただ、そうでない場合もあります。

その状態で税務調査の連絡があった場合は、再発行できるものはすぐに依頼し、集められる資料は出来るだけ集めることが大切です。

税務調査に間に合わなくても、その旨を伝え、後から提示することも可能です。

資料がない場合に、負担が大きくなるのは所得税ではなく消費税の方です。

調査対象期間が長い場合は、本当に負担が大きくなりますので消費税には注意が必要です。

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